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冬野由記
冬野由記
標高と緯度の高いところを志向する風来坊です。

2006年11月18日

第八章:救出 その4

<救出 その4>

 瑛は先頭を走っている捜査員の横に並んで叫んだ。
「あれは人じゃない。人外の・・・ものです! 追っても無駄だ」
 捜査員は無視した。
 しばらくすると火が見えなくなった。
「どこへ行った」
「坑内は入り組んでるんです。闇雲に追っかけたら危ない。それに、あれは人じゃな・・・」
「あそこだっ!」
 分かれ道の奥に一瞬火が見えた。
 全員が、それに誘われるように走り出す。
「からかわれてるんですよ。なんで・・・わからないんだ・・・」
 瑛の絶叫を無視して全員が駆ける。
 また見失う。そして、また遠くから火が誘う。皆がいっせいに駆け出す。
 瑛も叫びながら皆についてゆくしかなかった。
 そして、一行はどこかの坑道の奥まで誘(いざな)われた。
 火が消えた。全員が息を切らして、しばらく呆然とたたずむ。もう火は現れない。
「おい・・・ここは?」
 捜査員が我に返って瑛に尋ねた。
「ここは・・・八号・・・かな。でも・・・こんな・・・」
「八号?」
「試掘坑のひとつです。俺のカンが合ってれば、ここは八号試掘坑のはずです。でも・・・」
「でも・・・どうか・・したか?」
 捜査員も、他の者たちも、まだ息がととのわない。さすがに瑛は若い。
 瑛は、たびたび日下家を訪れて、たまには輝たちの坑内探査に同行することもあったから、だいたいの中(あた)りをつけることはできる。
「こんなに荒れてはいなかったはずです」
 皆が落ち着いてきた。静かだ。
「荒れてる、というと?」
「最近、発破をかけてますよ、ここは」
 あたりを眺めていた年かさの元坑夫が答えた。
「なるほど。ここが現場だった可能性があるのか・・・」
「ここから、どう行ったら・・・」
「静かに!」
 捜査員が皆の発言を制した。
 静かだ。静かだが・・・どこかで、かすかに人の気配がする。
 捜査員が瑛を手招き、瓦礫の山のほうを指した。
 瑛はランプをかざしながら、捜査員とともに、少し奥の瓦礫がうず高くなっているところを慎重にゆっくりと上っていった。身を伏せ、ランプをその奥に向ける。白っぽいものが目に入った。
「あれ・・・人では」
「人だ。人だぞ」

「うーん」

 今度は、はっきりしたうめき声が聞こえた。
「人だ! 男爵? 日下さん?」
 呼びかけた捜査員に白い人影が応えた。
「誰? だれですか?」
「捜索隊だ。助けに来たぞ。君は?」
「くさか・・・てらす」
「輝! おい、輝。俺だよ、瑛だよ」
「あ・・あきら。助かった。ぼくより、星さんと・・・母さんを・・・」
 捜査員が輝に訊ねた。
「君! 他の人たちは?」
「なんとか、無事です。男爵と母が・・・相当弱ってるので、お願いします」
 ランプを奥に向けると、他の三人が横たわっているのが見えた。
 捜査員が後ろを振り返って叫んだ。
「居たぞ。全員生きてる」
 八号試掘坑に歓声があがった。

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Posted by 冬野由記 at 22:14│Comments(0)連載小説
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