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冬野由記
冬野由記
標高と緯度の高いところを志向する風来坊です。

2006年11月18日

第八章:救出 その2

<救出 その2>

 札幌から来た捜査員と瑛たちは暁幌に移動し、警察は、そこで地元警官と有志数名からなる捜索隊を組織した。リーダーは捜査員、道案内は瑛である。
「わたしは、バロン(男爵)にお会いしたいと思って北海道に参りました。ですから、わたしたちも捜索に加わりたいのですが」
 暁幌までソフィとともに彼らに同行したグスタフが捜査員に申し出たが、捜査員は丁重に断った。
「お申し出には感謝いたしますよ。ですが、我々としても外国からのお客様に万一のことがあっては問題になりますので。第一、うかがったところによれば、あなた方はドイツの高名な科学者の血縁であられるとのこと。なおさら、危険な場所にお連れするわけには参りません。どうか宿にてお待ちください。何かわかりましたら必ずお知らせしますから」

 さて、捜索隊は地上、すなわち暁幌の丘陵地帯や暁幌川周辺を捜索するチームと、瑛とともに坑内に降りるチームとに別れることになった。地上隊は主に地元有志たち、地下隊は、捜査員以下、数名の警察官と暁幌炭坑で坑夫として働いていた幾人かの屈強な男たちに、道案内の瑛を加えた十名ほどである。
 二週間前の夏の終わり、輝と星男爵が歩いた道筋を、彼らは朱鳥坑に向かって急いだ。北海道の秋は早く、短い。一雨ごとに秋は深まり、冬の足音が近づく。小雨の降る中を星男爵がたどったときには夏の終わりの涼しさを感じさせた朱鳥周辺は、たった二週間で冬の気配を感じさせる秋の冷たい風を遊ばせている。そんな風たちの一団が、瑛たちの首筋を撫でては走り去った。

「ここを降りるのかね・・・」
 捜査員は、野郎縦坑の入り口に立ち、下を覗き込んだ。
「はい。昔は昇降機があったんですが、今は梯子です」
「この地下に住んでいるのか? その日下氏の家族は」
「ええ、この五年の間、ずっとです」
「ふぅ。想像がつかんよ。・・・ふむ、梯子一段にひとりずつ・・・だな」
「はい」
 ひとつの梯子に複数がかかると危険なので、ひとつの梯子にひとりずつ順番に降りてゆくことになる。まず、案内役の瑛から降り始めた。
 梯子を降り継いで数段目、瑛が踏み出した足に梯子が崩れ、音を立てて落ちていった。瑛は空足を踏んだようなかっこうで、あわてて梯子の上部にしがみついた。
「どうしたんだ!」
 後に続いていた者が異変に気づいて声をかける。
「は・・・梯子が」
「梯子が? どうしたって?」
「崩れたんです。変です。こんなことは初めてです」
「下の様子がわかるか? 下を覗いてみてくれ」
 捜査員が上から指示した。
 瑛は、腰に下げていたランプをかざして下のほうに目を凝らした。
 すぐ下の踊り場に梯子の残骸らしきものが見える。更に億を覗き込んでみると、どうやらそこから下には、梯子そのものが無いようだ。それに、かすかだが焦げ臭い臭いがする。
「梯子が・・・ここから下の梯子がありません。それに、焦げ臭い・・・燃やされたようです」
「何だって?」

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Posted by 冬野由記 at 21:38│Comments(0)連載小説
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